地中水素続報、ビル・ゲイツ財団「地中水素」掘削スタートアップ企業に投資

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以前取り上げた「地中水素」の続報です。あのビル・ゲイツ氏も天然の「地中水素」を脱炭素の切り札として着目し、採掘スタートアップ企業に投資をしたようです。
地下から天然水素、世界中で探索開始される『埋蔵量は数千年分とも?』(以前の記事)

ビル・ゲイツ氏

世界のエネルギーの専門家が近年注目するのが、地下深くの自然なプロセスで発生する地中水素(geologic hydrogen)だ。コロラド州のデンバーを拠点とする秘密主義のスタートアップの「Koloma(コロマ)」は、それを取り出す方法を発見したと主張している。

同社の共同創業者でオハイオ州立大学の地球科学の教授を務めるトム・ダラー(Tom Darrah)氏は、水素の発見と効率的な抽出に関する特許を16件出願しており、石油やガスと同様に水素を掘削する未来を計画している。2年前にひっそりと設立され、秘密裏に活動してきたコロマは、中西部で最初の掘削を行い、そこから採取した岩石とガスのサンプルを研究所でテストし、どの場所の水素が最も優れているかを調べているとのこと。

同社は、ビル・ゲイツ財団の「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(BEV)」をはじめとする投資家から9100万ドル(約127億円)の出資を受けており、この分野で最も資金力のあるスタートアップ企業だ。

現在、世界では年間約1億トンの水素が使用されており、その市場規模を1200億ドル以上とゴールドマン・サックスは試算している。それらの水素の大半は、CO2を排出するプロセスで天然ガスから作られ、石油の精製や肥料、化学薬品、食品加工に使われている。しかし、米国政府は、水素が将来的にCO2を排出しないエネルギー源として、より大きな役割を果たすと考えており、巨額の資金を投入している。

2021年の米国におけるインフラ整備法では、クリーン水素プロジェクトに約95億ドルが計上され、昨年のインフレ削減法では、ゼロカーボン燃料に対する1キログラムあたり3ドルの税額控除が盛り込まれた。

米国エネルギー省のプロジェクトのARPA-Eのディレクターのダグ・ウィックスを含む科学者たちは、地中水素が化石燃料に代わる新たな選択肢になると考えている。ゲイツは、自身のブログで、地中水素がクリーンエネルギーの「スイスアーミーナイフ」になると述べている。

コロマの共同創業者のダラーやCEOのピート・ジョンソン、COOのポール・ハラカらは、これまで一度もメディアで自社について話したことがなく、商業オペレーションの開始時期について言及しない。しかし、彼らの話が正しいとすれば、同社は10年以内に数百億ドルの収益を上げる可能性があるとのこと。

テキサス大学オースティン校の機械工学の教授のマイケル・ウェバーは、地下には数兆キログラムの水素が眠っていると考えているとのこと。「1キログラムの水素は1ドルの価値があるため、1兆キログラムがあれば、1兆ドルの水素が存在することになる。そのうちの何割かは実際に採掘できる可能性がある」という。

安価で扱いやすい「究極の水素」

水素は何十年もの間、クリーンなエネルギーとして注目されてきたが、その潜在能力は発揮されていない。水素を用いた燃料電池は、純粋なクリーンエネルギーとして自動車や船舶や列車、さらには定置型発電機用の燃料として使用することができる。しかし、この燃料は扱いにくくパイプラインから漏れる可能性がある。また、非常に可燃性が高く、貯蔵する際には圧縮して冷却する必要があるため、さらなるエネルギーを必要とする。

米国では、水と再生可能エネルギーから製造される「グリーン水素」や、天然ガスから製造されるがCO2を大気中に排出しない「ブルー水素」に、数十億ドル規模のインセンティブが向けられている。しかし、コロマは「ホワイト水素」や「ゴールド水素」と呼ばれる地中水素の方が、はるかに安価でエネルギー消費量も少ないと訴求している。

一攫千金を狙う石油採掘者のように、彼らは自社がどこを探し、掘削しているかを開示してない。コロマの創業者たちは、最初の掘削ポイントが米国中西部にあるとだけ述べている。同社のライバルであるナチュラル・ハイドロジェン・エナジー社とハイテラ社は、ネブラスカ州とカンザス州で、独自の試験掘削を準備しているとのこと。

ブレイクスルー・エナジーの技術リーダーで、デューク大学の元化学教授であるエリック・トゥーンは、コロマが「独自の技術とAIツールで、信じられないほどの優位性を築いている」と語っている。

数年先には商用化が始まる

この分野では、さまざまな企業による探査や掘削が始まっており、エネルギー省の新たなプログラムも始動した。「地中水素の商業オペレーションは、数十年先ではなく、数年先の話です」とウェバーは話す。

現状で世界で生産されている水素の約40%は石炭から製造されており、天然ガスから製造するよりもCO2排出量が大きい。そのため、グリーン水素や天然水素を供給できる企業には、近い将来にかなりの需要が見込まれるとしている。

しかしコロマは、市場がまだ十分に整っていないことを理由に、市場投入を急いでいない。「現状では水素の大口の顧客は、製油所とアンモニア工場だけです。私たちは能力を高め、水素の需要がピークに達する頃に商業化できるよう努力しています」とのこと。

水素は燃焼しやすく、高圧下では爆発する可能性がある。ヒンデンブルグ号やスペースシャトル・チャレンジャーの事故を思い起こさせる話だが、水素の掘削が大惨事を引き起こす可能性は低い。地中深くの水素ポケットのおかけで、酸素から遮断されているためだ。

ダラーは、地中水素の掘削がCO2を排出しないだけでなく、石油や天然ガスよりも水の使用量が少なく、環境へのリスクも低いと確信している。「ガソリンが普及したのは、土地の使用量が少ない密度の高いエネルギー源だったからであり、平準化されたコストやCO2の排出量を考えると、地中水素の利点はすべてそこにある」と言っています。

Forbes記事より抜粋

“地中水素続報、ビル・ゲイツ財団「地中水素」掘削スタートアップ企業に投資” への2件の返信

  1. 天然の「地中水素」が商用採掘され、採算が取れ、埋蔵量が膨大であればゼロカーボンの切り札となると期待しています。
    それに水素の運搬・貯蔵・発電技術は日本が先行しており、燃料電池のエネファームやFCV自動車、水素エンジン車など末端利用技術も進んでいるので、この探索プロジェクトにはぜひ成功して欲しいものです。SCN:伊東

  2. ピンバック: 地中水素続報、米政府、期待の新エネルギー「地中水素」採掘に助成金投入 – NPO法人 島原カーボンニュートラル推進協議会

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