地熱発電とは

地熱資源は火山性の地熱地帯で、マグマの熱で高温になった地下深部(地下1,000~3,000m 程度)に存在します。地表面に降った雨や雪が地下深部まで浸透し、高温の流体、すなわち地熱流体となります。これが溜まっているところを地熱貯留層といいます。
地熱発電は、地熱貯留層より地熱流体を取り出し、タービンを回転させて電気を起こしています。
発電方式は複数ありますが、最も一般的なフラッシュ発電と、最近増えているバイナリー発電を説明します。

フラッシュ発電
フラッシュ発電は、主に200℃以上の高温地熱流体での発電に適しており、地熱流体中の蒸気で直接タービンを回します。シングルフラッシュ方式は次のように発電を行います。

①地熱貯留層に 生産井 を掘り、地熱流体を取り出す。
②セパレータ(気水分離器)で地熱流体を蒸気と熱水に分け、熱水は還元井から地下に戻す。
③蒸気でタービンを回転させ、発電する。
④発電し終わった蒸気は 復水器 で温水にし、さらに 冷却塔 で冷ました後、復水器に循環して蒸気の冷却に使用する。

ダブルフラッシュ方式は、セパレータで分離した熱水をフラッシャー(減圧器)に導入して低圧の蒸気をさらに取り出し、高圧蒸気と低圧蒸気の両方でタービンを回す方式です。高温高圧の地熱流体の場合に採用され、シングルフラッシュよりも約20%出力が増加します。八丁原発電所や森発電所で採用されています。
海外に目を向けると、ニュージーランドにはトリプルフラッシュ式の発電所があります。

バイナリー発電
バイナリー発電は、水よりも沸点の低い二次媒体を使うので、より低温の地熱流体での発電に適しており、地熱流体で温められた二次媒体の蒸気でタービンを回して発電します。

①生産井から地熱流体を取り出す。
②地熱流体で二次媒体を温め、蒸気化する。二次媒体を温めた後の地熱流体は、還元井から地下に戻す。
③二次媒体の蒸気でタービンを回転させ発電する。
④発電し終わった二次媒体は、凝縮器で液体に戻し、循環ポンプで再度、蒸発器に送る。

【温泉バイナリー発電】
80℃を超えるような温泉が湧出する温泉地では、その高温の温泉をバイナリー発電の熱源として使え、熱の有効利用になります。
発電に利用された後の温泉は、温度が下がり、浴用に適温となります。

<地熱発電の特徴>

再生可能なエネルギー
火山性の地熱地帯では、地下深部がマグマに熱せられ高温になっています。この地下深部の高温域を地熱貯留層といいます。地表面に降った雨や雪が地下深くまで浸透し、地熱貯留層まで達すると、高温の流体になります。この高温の流体を地熱流体といいます。地熱流体は浮力を持つため上昇します。このような地熱流体の流れは、主として割れ目を通して起こります。
地熱発電のために地下から蒸気や熱水を取り出すと、その分だけ地熱貯留層から地熱流体は減ります。すると、その減った分に応じて周囲から地熱貯留層に向けた地下流体の流れが生じます。また、還元井から地下に戻された熱水も地熱貯留層に戻り、再び暖められます。
このように、自然に回復するサイクルに見合うように地熱発電を行えば、地熱エネルギーは永続的な利用が可能です。

純国産のエネルギー
日本は、エネルギー資源である石油・天然ガス・石炭・ウランなどのエネルギー資源の大部分を輸入に頼っています。エネルギー自給率は、2010年において原子力を国産とした場合でも20%以下に留まり、80%以上を輸入しています。
地熱資源は世界有数の火山国である日本の地下に豊富に蓄えられており、この国産のエネルギーを利用することは、日本のエネルギー自給率の向上につながります。

豊富な資源量
火山国である日本は、アメリカ、インドネシアに次ぐ、世界第3位(2,347万kW相当)の地熱資源大国です。国内で稼働中の地熱発電所の出力は、36地点で合計約52万kWと、地熱資源量のわずか2.2%であり、この発電出力は世界第10位です(2016年6月現在)。日本には豊富な地熱資源量がありながら、十分利用されずにいます。

クリーンなエネルギー
発電所建設から運転中、発電所解体までに発生する全てのCO2について計算した数値(発生する全CO2排出量を全発電量で割った数値)を「ライフサイクルCO2排出量」と言います。地熱発電は、ライフサイクルCO2排出量が最も少ない発電方法の一つで、地球温暖化の軽減に効果的です。

安定的な電源
地熱発電は、昼夜・天候を問わず24時間連続して発電することができます。これにより、地熱発電は太陽光発電や風力発電と比べて設備容量は少ないものの、設備容量に対する発電電力量が多く、利用率が高い安定電源です。
また、自然エネルギーの中では出力も安定しており、ベースロード電源として利用できます。