エネルギー危機下、英BPの脱炭素戦略

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独ダイムラートラックと共同で取り組んでいる水素で走る燃料電池車

エネルギー世界大手の一角を占める英BPは、投資家や規制当局から脱炭素化を迫る圧力にさらされている。

その対応として、同社は2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を発表した。最近になって30年の排出削減目標の一部を下方修正し(19年比で20〜30%減と従来の35〜40%減から引き下げた)、石油・ガス事業への投資を最大80億ドル(約1兆700億円)増やす方針を示す一方、50年の実質ゼロの目標は堅持し、バイオガスなど環境に優しい分野への投資も最大80億ドル増やすことを明らかにした。

BPはこの目標を達成するために、石油・ガスに近いエネルギー分野で事業を強化している。電気自動車(EV)の充電や電力・送配電テックなど、再生可能エネルギーで動く環境に優しいインフラを支える技術に力を入れている。こうした成長市場で足場を固めるため、企業の買収や、技術の探求に向けた提携、革新的なスタートアップへの出資を進めている。

今回のリポートではCBインサイツのデータを活用し、BPの20年以降の買収、出資、提携、共同事業から5つの重要戦略をまとめた。この5つの分野でのBPとのビジネス関係に基づき、企業を分類した。

・脱炭素テック

・EVテック

・電力・送配電テック

・石油・ガステック

・再生可能エネルギーテック

 

BPの戦略図

脱炭素テック

BPは30年までに事業でのCO2排出量を19年比で20〜30%削減し、50年までに実質ゼロを達成する目標を掲げており、排出量削減に向けて積極的に動いている。
排出量削減の代わりではないが、カーボンオフセット(炭素相殺)の電子取引市場に出資し、支援している。

EVテック

米ブルームバーグによると、22年の世界の乗用車に占めるEVの割合は前年比60%増えた。この数字は今後さらに増えるだろう。CBインサイツのデータに基づくと、このシフトと並行し、30年にはEV充電市場の規模は280億ドルに達する。

EV充電

BPはガソリンスタンドの運営に長く携わってきたため、この分野ではEV充電テックに最も積極的に取り組んでいる。
アジアにも進出しているが、主に北米と欧州での事業拡大に力を入れている

その他のEVテック

BPはコンビニ・モビリティー事業の成長を支えるため、EVの利用をスムーズにするアプリなどその他のEVテックも支援している。

電力・送配電テック

BPは総合エネルギー企業への転身という比較的新たな目標に向けて取り組んでいる。そのため、これまでは優先度が低かった電力・送配電テックでの能力強化と事業拡大を進めている。

石油・ガステック

BPはエネルギー移行計画の資金を捻出するため、なお石油・ガス事業に投資している。費用対効果の高い手段で石油・ガス資産のパフォーマンスを最適化するため、インフラのモニタリング、探査テック、業務フローのデジタル化と自動化に資金を投じている。

再生可能エネルギーテック

石油・ガスは長期的な衰退に直面しているため、BPは低炭素エネルギー部門の強化に力を入れている。この目標を達成するため、他社との提携や出資、買収により新しい技術を試し、様々な再エネで大規模プロジェクトを進めている。

バイオ燃料

BPは低炭素燃料部門の急拡大を踏まえ、バイオ燃料での地位確立に取り組んでいる。「再生可能天然ガス(RNG)」と呼ばれるこうした燃料は天然ガスを直接代替し、排出量削減を支援する。

地熱

BPは規模拡大に時間がかかるが有望な再エネテックにも投資している。

水素

水素はBPが再エネ移行に伴い特に重視している分野だ。鉄鋼など脱炭素化が難しい部門のCO2排出量削減に貢献できるからだ。水素はバリューチェーン全般で規模拡大が必要なため、BPの活動は水素の生産から水素トラックの開発に至るまでバリューチェーンのあらゆる分野に及んでいる。

太陽光

太陽光は化石燃料よりもコスト競争力が高くなっているため、BPのような企業は太陽光発電施設の規模拡大を推進している。

風力

風力発電プロジェクト(特に洋上風力発電プロジェクト)は、BPの再エネ拡大計画で重要な位置に付けている。

その他

BPは事業強化に向け、この5つの重要分野だけでなく他のカテゴリーの企業にも積極的に投資し、関係を築いている。

日経新聞から抜粋

 

 

 

 

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