パナソニック、EVの導入で「電気料金が上昇」を防ぐソリューション

パナソニックエレクトリックワークス社は2022年5月、大阪府門真市のエレクトリックワークス社門真本社にて、EV充電ソリューションである「Charge-ment」の発表を行った。このソリューションを活用すると、EVを複数台活用する企業や自治体でも効率的な充電ができ、充電のピークを調整して電気の基本料金の上昇を抑制できる。また、適切な能力の受電設備での運用が可能になるという。

 脱炭素社会の実現や燃費コストの削減を目指して、昨今は企業や自治体に多くのEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)が導入されるようになった。そこでクローズアップされるのが、充電に関する問題だ。複数のEV/PHEVを所有する事業所では、車両の帰社後に一斉に充電が開始される。このため、一時的に帰社する昼や夕方から夜間に電力消費のピークを生み、これが電力契約の上昇を招く可能性がある。

複数のEVやPHEVが一斉に充電を開始すると、使用電力のピークを生みやすい
電気自動車における充電時の課題。多くのEVやPHEVが一斉に充電を開始すると、その時間帯に電力使用量のピークがくる

パナソニックが発表した「Charge-ment(チャージメント)」は、EV/PHEVへの充電を統合制御し、複数の車両を効率的に充電するソリューションだ。Charge-mentを活用すると個々の車両への充電具合を調整し、全体の電力消費を平準化できる。これによって電力消費のピークを生まない充電となり、最適な電力コストでEVを運用できるようになる。また、ピークに合わせた能力の受電設備を追加するのではなく、EVやPHEVの充電に合わせた最適な能力を持つ設備や、場合によっては受電設備の追加なしでEV/PHEV運用が可能になる。
使用電力のピークを作らず、基本料金を最適化

 日本における電力の契約には、過去1年間における30分間の電力使用量の平均が最大となった月の電力量によって次期1年間の月の基本料金が決まる「デマンド契約」という仕組みがある。このため、将来の基本料金を上げないためには、電力使用量のピークを作らず、使用量を平準化するような運用が重要とされている。

 企業においては、例えば空調の使用電力を監視し、需要電力のピークを生まないようにエアコンの稼働をシフトするソリューションが既に他社から発表されている。今回パナソニックが発表したCharge-mentは、このようなシステムのEV/PHEV版といえるものだ。

Charge-mentの導入/非導入のコスト試算。低圧電力契約の拠点に10台のEVと充電器を導入し、各車100Km/1日走行の場合。年間のランニングコストは約25%減(120万円相当減)となるという。
Charge-mentは、EV/PHEVの充電によって昼や夕方に発生する需要電力のピークを他の時間帯にシフトする。これによって電力使用量のピークを発生させない。

複数のEV/PHEVを運用する事業所では、日中にEV/PHEVを使い、充電は帰社後になる。このため、複数の車両に対する充電は、車両が一旦帰社した昼食時や夕方から夜にかけて重なり、ここが需要電力のピークとなる懸念がある。Charge-mentを使えば一斉充電によるピークが避けられ、基本料金の上昇が回避できるという仕組みだ。

電動車の普及拡大に対応した、新しい充電ソリューション

 日本では、政府のグリーン成長戦略において「2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう、包括的な措置を講じる」との方向性が示された。これによって、2030年には2020年比で25倍ものEVやPHEVが販売されることが予想される。当然、企業においても電動車の普及は進み、電力の需要は増加することになる。

 パナソニックは、これまでも企業や自治体の脱炭素化に向けた活動をフォローする各種のサービスを提供してきた。今回発表されたCharge-mentもこの一環であり、相談から導入、運用、管理までを総合的にサポートするソリューションとなる。

 Charge-mentのサービスは、HEMSや分電盤、創蓄連携システムなどを手掛けてきたエレクトリックワークス社のエナジーシステム事業部内に設置されたエネルギーソリューション事業推進センターが提供する。同センターでは、創エネ・蓄エネにつながるハードウェアとそれら使った制御技術を活用したソリューションの創出を担っている。
導入相談から運用、管理までをトータルにサポート

 Charge-mentは、EV充電器の導入前相談から運用管理までをワンストップで提供する。また、デジタル化で管理業務を軽減できるソリューションとなっている。

 導入前の相談では、パナソニックの幅広いラインアップとノウハウから最適なシステム提案を行う。また、導入後も、運用面のサポートや利用データの分析・改善の他、アップデートの提案を行うという。

 Charge-mentの導入や効果予測に際しては、EVやPHEVへの充電で使う電力はもとより、社屋内などで使っている電力の算出も必要になる。これに関しては、過去の使用実績を参考にする。将来的には、社屋などで使っている(EV/PHEV充電以外の)電力使用量をリアルタイムで把握するシステムの開発も検討しているという。

 電気自動車を導入することで、企業にとっては管理業務に新しい項目が増えることになる。Charge-mentは電気自動車の管理業務をデジタル化することで、こうした業務も効率化できるようになっている。

 Charge-mentでは、充電に関するデータがクラウド上に集まる。そのため、管理者はパソコンやタブレットなどを使い、いつでも運用の確認ができる。また、複数拠点に点在するようなEV/PHEVの充電スポットに関しても、その管理が一元的に行えるという。

 管理画面では充電状態や充電実績、CO2削減量の他、ガソリンの場合の燃費コストなども表示できる。また、充電条件の設定も可能だ。

各充電器の状態、運用状況が一覧表示できる。(画面はパナソニック提供)

パナソニックでは、Charge-mentのターゲットとしてEVの導入が先行し複数のEVを充電する必要がある企業や自治体を想定している。サービス開始は2022年10月からを予定し、2023年で10億円、2030年では140億円の販売を目標としているという。

スマートジャパン

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