合成燃料もバイオ燃料も水素も性能はもはや十分。あとはコストのみ。EVは?

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合成燃料でカーボンニュートラルを実現

自動車界における2023年の大きなニュースは、EU圏で合成燃料(e-fuel)が認められたことだろう。それまでは、地球温暖化を防止する意味から、2030年をひとつのメドに、二酸化炭素を排出する内燃機関車の製造、販売をいっさい認めないという姿勢だったもののが、合成燃料の登場によってカーボンニュートラルは可能だという結論に達し、合成燃料を使用する車両に限り、2030年以降も製造、販売を認可するという状況に変わったからだ。

e-fuelとは

大きく影響したのはドイツ国内の動きで、自動車メーカーが政府に強く働きかけ、合成燃料のカーボンニュートラル性を認めさせるといういきさつだった。

さて、この合成燃料だが、燃料名が意味するように、「合成」した燃料を指している。では、何と何を合成したのかといえば、それは水素と二酸化炭素のことである。元素記号で表せばCO2とH、つまり炭素(酸素)と水素の組み合わせによる燃料成分は化石燃料と同じであり、CとHを合成すれば、ガソリンや軽油と同等・同質の燃料が作り出させることを意味している。

燃料成分が同じなら、これまでどおり化石燃料から作られたガソリンや軽油でいいじゃないか、という話になるが、現実のロジックは少々異なっている。新たに採掘した化石燃料を燃やすと、その分だけ二酸化炭素は発生するが、合成燃料は、水素と大気中の二酸化炭素を使って作るため、燃焼後に排出される二酸化炭素はもともと大気中にあったものだけに、大気中の二酸化炭素の総量を増やすことはない(減ることもない)、という考え方が成立する。大気中から取り込んだ二酸化炭素を再び大気中に排出するだけなので、二酸化炭素の総量は、プラスマイナスゼロという相殺勘定が成り立つことになるからだ。

新燃料は不満ないレベルで活用できるがまだまだ高価すぎる

一方の水素燃料、水素は単位質量あたりの発熱量はもっとも大きいのだが、単位体積あたりの発熱量は相当に小さくなってしまう。密度が約0.09と非常に小さいためだ。このため、内燃機関のシリンダー内に、どれほど多く(重量的に)の水素を送り込めるかが性能確保のカギとなるようだ。

もちろん、空燃比の問題もあり、現状、最先端の開発レベルにあるトヨタの開発エンジニアにどれほどなのかを尋ねたこともあったが、残念ながら開発途上の機関であり、企業秘ということで明かしてもらうことはできなかった。

メーカーの研究室レベルでは、合成燃料(製品化の情報は未確認)、水素燃料、バイオ燃料の対ガソリン、対軽油の性能比較が行われ、現状でどの程度の動力性能が確保されているかは不明だが、これらは理論的に不満のないレベルで活用できる新燃料だと判断してよいだろう。むしろ、現状考えられる大きな問題は、燃料のコストである。普及するには、現状の石油製品並の価格帯に落ち着かないと、市場が目を向けることはないように思える。

そして最大の課題はコストだ。この数年、再エネ発電のコストが急速に低下し、グリーン水素の製造コストも大幅に下がった。それでも現時点でe-fuelの製造コストはガソリンの数倍高い。
資源エネルギー庁の試算によれば、e-fuelの製造を原料調達から製造まですべて国内で行う場合、約700円/リットルのコストがかかる。このうち約9割がグリーン水素のコストであり、その内訳は電気分解に使う再エネ電力のコストが大半を占める。海外の水素を輸入し国内でe-fuelを製造するケースは約350円/リットル、すべて海外で製造するケースは約300円/リットルと試算されている。今後大規模な製造施設と原料のサプライチェーン構築で100円/リットル以下を実現できると予想されているようだ。

CARTOP論説から抜粋

“合成燃料もバイオ燃料も水素も性能はもはや十分。あとはコストのみ。EVは?” への1件の返信

  1. もしe-fuelや合成メタンが現在の化石燃料と同等かそれより低コストで流通し始めれば、自動車では高価で不都合の多いEVシフトを急がなくても既存のエンジン車を残しながらカーボンニュートラルを実現できるし、火力発電や工場、家庭のガスも配送設備や機器がそのまま使えるのです。加えて一部の国や地域に独占されている化石燃料の呪縛から解き放たれるかもしれません。この方向に進めば、産業革命以来のエネルギー大革命になるかもしれません。大いに期待したいことろです。皆さんはどうお感じになられましたか?SCN:伊東

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