長崎市琴海イワテック社の再エネ水素実証プラント視察報告

2023年7月26日(水)午前11時、長崎県内で最先端といわれる太陽光から水素を製造・貯蔵・水素発電での地産地消実証を行なっておられる株式会社イワテック(本社:長崎市宝町:岩元孝一郎社長)の琴海再エネ実証プラントを視察の為に訪問しましたので報告いたします。
訪問は当SCN協議会から理事長の林田と副理事長の伊東の2名、島原市役所から市民部部長、環境課課長、環境班班長の3名、合計5名で訪問しました。

プラント玄関にて訪問時の記念撮影

水素は燃やしても二酸化炭素が出ないエネルギーです。脱炭素社会へ向けた鍵になると、国内外で大きな期待を集めています。太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電気を使って、水から水素を生成すれば(グリーン水素と呼ばれて注目されています)地球環境に極めてやさしいエネルギー源となるのです。

その「太陽光由来のグリーン水素」を実用化し、エネルギーの地産地消に生かそうと研究している企業が長崎市にありました。今回その最先端のプラントを見学させてもらうために訪問しました。プラントの場所は長崎市の中心部から北へ車で1時間ほどの所にある長崎市琴海形上町にありました。イワテック社の研究用としての施設だそうで、現状では水素の販売はしていないとのこと。実証プラントなのに建屋も設備も専用で建設されたとのことで、とても本格的で感銘いたしました。

再エネ水素実証プラント全景(イワテック社提供)

再エネ水素実証プラント全景(イワテック社提供写真)

水素の製造には、「化石燃料から作る方法」と「水を電気分解して作る方法」があります。最近の記事で地下に眠る天然水素を掘り出す話題もありますが、現状ではこの2つの製造方法が主流です。
このプラントでは、160枚の太陽光パネルを並べて発電し、その電力を使って水を電気分解して水素を生成、ボンベに詰めて貯蔵します。太陽光発電の出力は、最大49.6kWだそうで、天気の良い日には、水素7000リットルが入るボンベ3本分の水素を作ることができるとのことですが、その量がどの程度のエネルギーかと言うと『7000Lボンベ3本分の水素を燃料電池に利用し発電を行うと、一般家庭2~3日分ほどの電力を供給することができます。』とのことでした。

まずは、プラント内の設備を説明を受けながら見学させて頂きました。

電気系制御室にて説明受け様子撮影

制御室、パワーコンディショナーやDC/ACコンバーター等の電気制御機器、右列は水素製造のバッファとしてのリチウムイオン電池が鎮座していました。『リチウムイオン電池で蓄電出来るのであれば効率の悪い水素に変換する必要はあるのですか?』との質問については、蓄電器はとても高額で重量もあり動かせないので水素のようにボンベにつめて移動できないので、エネルギーの運搬キャリアとして使えないとのこと。また電気制御系は全て自社で設計・開発されたとのことで、その技術力の高さに感銘しました。

水素発生装置付近にて撮影

これがメインの水素発生装置です。装置はアメリカのメーカーのものだそうです。太陽光発電は日射の変動に大きな影響を受けます。この装置は、日射が弱い状態から強くなった時に、素早く応答して水素発生量を増やすことができるのが特徴だそうで、30年前から生産されている信頼性の高い製品だそうです。
また、このプラントには、水素を発生させる装置だけでなく、機械を冷やす冷却装置、水素を圧縮してボンベに詰める装置、センサーなど様々な周辺機器があります。それを統合しながらトータルで問題なく動かせるように実証・調整を行なっておられるのだそうです。

水素バッファータンク付近を撮影
水素バッファータンク(イワテック社提供写真)

左奥のタンクは「水素バッファータンク」だそうで、水素を隣の部屋のコンプレッサーで圧縮する前の貯蔵用だとのこと。

水素圧縮機の設置室にて撮影
水素圧縮機(イワテック社提供写真)

水素発生装置の部屋とコンクリートで区切られた隣の部屋にある水素圧縮機を置く部屋です。写真の手前の青い装置がコンプレッサー本体となります。これもアメリカのメーカー製だそうです。ここで圧縮した水素を、さらにコンクリートで区切られた別室の赤い水素ボンベ(水素マニホールド:下写真)に水素を詰めます。

水素マニホールド(イワテック社提供写真)

また、本年8月には蓄積した水素を5kWの燃料電池を設置して水素から電気を生成しエネルギー地産地消の実証実験も開始されるとのこと。

プラント見学後に会議室で資料による説明と質疑応答をして頂きました。

会議室にて資料による説明と質疑応答の様子撮影

本日2023年7月26日の水素実証プラント見学は島原におけるカーボンニュートラル活動の参考として大変有意義でしたが、加えてイワテック社の手掛けるバイオマス発電事業について大いに興味を惹かれ、多くの質疑応答に応えて頂きました。今後、イワテック社が進めておられる県との協議会や研究会にも紹介してもらい『情報交換や協業して交流できれば幸いです』ということで話しを締めました。

一緒に参加させて頂いた島原市役所側のメンバーの方々も、大変有意義な視察会だったと話しておられました。

イワテック社のご担当者様方には大変丁寧に対応して頂き、誠にありがとうございました。今後益々のご活躍をお祈りすると同時に、何か実りのある協業ができればと願っております。
本当にありがとうございました。

NPO法人島原カーボンニュートラル推進協議会 伊東和彦

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