トヨタの燃料電池、フランス企業の大型トラックに採用

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欧州トヨタはフランスのスタートアップ企業・ヒリコの大型トラック向けに燃料電池モジュールを提供すると発表した。水素燃料電池は航続距離の長い商用車に適しているとされ、欧州でもトヨタの水素パートナーシップが拡大している。

欧州で拡大する「水素クラスター」

TMEが欧州で製造する第2世代FCモジュール

フランスのスタートアップ企業であるヒリコ(Hyliko)は、トヨタの第2世代水素燃料電池(FC)モジュールを組み込んだ大型トラックを開発し、ゼロエミッションフリートを提供する計画だ。

2023年2月22日に発表されたこの提携により、トヨタのFCシステムは欧州のトラックセクターへ事業を拡大する。

燃料電池や水素ソリューションは、他にも電車、バス、船舶用、定置発電機など様々なセクターでの利用拡大が見込まれるが、特に市場規模が大きくなると予想されているのがトラック用だ。

トヨタのFCモジュールは「ミライ」の燃料電池システムがベースとなっている。乗用車用から異なるセクターへの展開を図るため、エアや水素の供給、冷却系、制御系などミライのシステムを一つにまとめ、コンパクトに再パッケージしたものがFCモジュールだ。

第2世代のFCモジュールは、2022年1月から製造しており、第1世代と比較するとよりコンパクトで軽量ながら、出力密度は向上している。形状としては「キューブ」(縦型)と「フラット」(横型)があるが、直方体とすることで配線・配管の複雑性を排除し、自動車用に限らず様々な用途に使いやすくした。

このFCモジュールはトヨタの欧州事業統括会社、トヨタ モーター ヨーロッパ(TME)のザベンテム(ブリュッセル、ベルギー)にある研究・開発施設で製造する。欧州で製造するのは、この地域で燃料電池の需要が急速に伸びることが見込まれているからだ。

起業家や新興企業にとって新しい技術の提供とサポートは不可欠であり、トヨタの燃料電池にも大きな関心が寄せられている。トヨタとしても新しい事業機会を捉えスケールアップするには、こうした企業とのパートナーシップ拡大が欠かせない。

環境政策を通じて経済成長を目指す「欧州グリーンディール」では、2050年までの温室効果ガス排出量のネットゼロ実現のために、水素社会の拡大が一つの柱とされ、欧州は水素技術のブレークスルーと商用展開を図っている。

こうした背景から欧州では様々なセクターに「水素クラスター」(クラスターは「集団」の意味)が誕生し始めた。

特にトラック・バス・タクシーなどの商用車は、水素社会が規模を拡大する上で中核となる分野となり、市場の成長が約束されている。TMEは広範な水素技術とソリューションの実装により、欧州で水素エコシステムの環境整備を支援する。

水素社会のビジョン

北米のケンワースと共に実証したFCEV大型トラック

TMEとしても水素モビリティの成長を加速させる手段として燃料電池ビジネスの拡大を図っており、燃料電池自動車(FCEV)のトラックには大きな期待がかかっている。欧州では陸上貨物輸送の77%をトラックが担い、2番目にエネルギー消費の多いセクターとなっているからだ。

水素を燃料として使用するシステムは、重量が嵩むバッテリー電気自動車(BEV)より軽くなる。トラックは車両重量が増えると積載量が減ってしまうのでこれは大きなメリットだ。また充填時間が短く済むため、稼働率が高く燃料補充の頻度が多い商用輸送にも適している。

従って、事業用トラックによる大量の水素需要と利用パターンは、持続可能なインフラ開発に大きく貢献すると予想される。

グローバルに見ると、トヨタは水素燃料電池技術でトラック・運送業界の多くのパートナーと協力しており、日本国内では日野自動車、いすゞ自動車、CJPTと共に小型FCEVトラックの普及に向けた取り組みを進めている。

また、アメリカにおいては2019年より行なわれたZANZEFFの「ショア・トゥ・ストア」プロジェクトで、トヨタ・ケンワースの大型FCEVトラックが、ゼロエミッションでありながらディーゼル車と同等のパフォーマンスを発揮することを証明した。

欧州でのヒリコとのパートナーシップは、トヨタの水素エコシステムに対するビジョンをさらに推し進めるための新たな一歩となる。というのも、ヒリコはFCEVトラックだけでなく、燃料となる水素の供給も「aaS」(アズ・ア・サービス)として提供することを目指す新興企業だからだ。

同社は水素の供給面ではバイオマス熱分解によりカーボンニュートラルなグリーン水素を製造するとともに、製造過程で出るCO2をバイオ炭という形でキャプチャーすることで、全体の排出量がマイナスになる「スーパーグリーン水素」を採用する。

バイオ炭は農業用の肥料(土壌改良剤)として安定して炭素を固定するので、FCEVトラック+スーパーグリーン水素という組み合わせにより炭素収支は中立を超えて「カーボンネガティブ」を実現する。

ヒリコの試算では、保有車両の45%をカーボンネガティブとすることで全体としてカーボンニュートラルを達成するので、全車をゼロエミッション化してカーボンニュートラルを目指すより効率的だという。

このように、水素の需要(FCEVトラックの製造)と供給(スーパーグリーン水素の製造)の両面を刺激することで、水素モビリティというビジョンを実現可能なビジネスモデルに拡大するというのが同社の目標とのこと

Fullload web記事から抜粋

 

 

 

 

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