フィンランド「砂電池」運用開始。電気を低コストで貯蔵

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フィンランドのエネルギー企業Polar Night Energyが、世界初の商業用「砂電池」の運用を開始。再生可能エネルギーを貯蔵し、地域の一般家庭の電力などに利用されている。従来よりも低コストかつ手に入りやすい砂を原料でにしており、世界中から注目されている。

再生可能エネルギーの課題のひとつ 蓄電池の存在

気候変動や化石燃料の価格高騰により、いままで以上に注目されている再生可能エネルギー。環境への負荷を少しでも減らそうと、世界各国が再エネ移行に取り組んでいる。日本も、再エネの割合を2020年度の19.8%から、2030年には36〜38%にする目標を掲げている。

一方で、再エネを主力エネルギーにするには課題も多い。なかでも太陽光や風力は天候に左右されるため、発電量が不安定なのがデメリットである。これを補うために、電気を貯めておける蓄電池が必要だと言われている。

しかし、大規模な蓄電池の設置には物理的な土地と大きなコストがかかる。それに加え、畜電池のなかでも主流のリチウムイオンには、別の問題もある。原料となる鉱物の多くは、採掘のために人々が過酷な労働を強いられたり、なかには児童労働が行われていたりすることもあると指摘されているのだ。


砂を原料にした蓄電装置を開発

この課題を解決するアイデアがフィンランドで生まれた。エネルギー企業「ポーラー・ナイト・エネルギー(Polar Night Energy)」が、砂を主原料とした商用の蓄電装置「砂電池」を開発したのだ。

「砂電池」は、砂に電気を蓄えるシステム。スチール製のコンテナに、自動蓄熱システムを搭載し、その中に砂を入れるというシンプルな構造だ。

具体的には、こたつやドライヤーに使われ、電気抵抗によって熱を発生させる抵抗加熱というしくみを利用して熱を発生させ、それをコンテナ内に循環させている。砂は熱を蓄えるのに優れた素材で、この砂電池では500℃前後で数ヶ月間も蓄えることができるという。また、原料である砂は、可燃物質さえ取り除けば種類は問わないそう


西フィンランドで稼働 貯蔵した熱が地域の暖房に

世界初となる商用の「砂電池」は、フィンランドの電力会社ヴァタヤンコスキ(Vatajankoski)社の発電所で稼働中だ。幅4m、高さ7mのスチール製コンテナに100tの砂が詰められており、最大出力は100kW、8MWhの容量を備えている。

貯蔵した熱は必要なときに放出し、同地域の家庭やオフィス、市民プールを温めるために使用されている。現段階では問題なく稼働しているとのこと。夏の間にエネルギーを貯蔵し、寒さの厳しい冬に十分なエネルギーを供給することが期待されている。

砂電池のしくみ。太陽光や風力などの再生可能エネルギーでつくられた電気が、砂電池で貯蔵され、必要に応じて家庭やオフィスなどに送電される。

設置コストは、1kWhの容量あたり10ユーロ(約1,350円)。日本で買える一般的な家庭用蓄電装置で、容量1kWhあたり数万から数十万円することを考えると、かなりコストを抑えられる。また「砂電池」の容量やサイズなどは設置場所に合わせてカスタマイズも可能だそう。

同社の創設者であるトミー・エロネンとマルク・ヨロネンは「この砂電池で風力や太陽光発電の普及をサポートをしたい」と話す。革新的でありながら、どこでも手に入りやすい原料でつくられている砂電池は、これから世界各国で導入されるかもしれない。

再エネ移行へ向けて躍進的に取り組む日本にとっても、一歩前進するためのヒントをもらえそうだ。今後の運用状況や、新しい情報にも注目したい。

ELEMINIST

 

“フィンランド「砂電池」運用開始。電気を低コストで貯蔵” への2件の返信

  1. 原発の海側にこの電池を積み立てれば、地震のときの防波堤としても作用するかもしれませんね。

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