京大発バイオベンチャー光合成細菌培養で二酸化炭素を減らす

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「光合成というプロセスによって、二酸化炭素を吸収・固定する。我々が社会実装を進めている技術を一言で表すならは、『空気を資源化するバイオテクノロジー』です」
京都大学発ベンチャー「Symbiobe」(シンビオーブ)の後圭介代表はこう話す。
同社は、京都大学大学院工学研究科の沼田圭司教授の研究シーズをもとに、2021年1月に創業したばかりのスタートアップだ。2020年代半ばを目処に、研究開発を進めている「光合成細菌」を活用して大気中の二酸化炭素や窒素を「固定化」する商用プラントの実現を目指している。

京都大学桂キャンパスに作った試験用のプラント

8月26日、Beyond Next Venturesや京都大学イノベーションキャピタルを引受先に、約2億円の資金調達を実施したと発表した。

今回の資金調達によって、同社の肝となる「光合成細菌」を大量培養するための技術開発や、生産された原料を元にしたマテリアルの開発、組織体制の強化などを進めるとしている。
二酸化炭素を吸収すること自体もビジネスに

いま世界中を悩ませている地球温暖化は、人類が化石燃料を地中から掘り起こし、消費してきたことで進行してきた。現状さまざまな対策が進められているが、一度地中から大気中に放出されてしまった二酸化炭素を簡単に減らす方法はない。

Symbiobeでは、沼田教授の研究を通じて見いだされた光合成をする細菌(海洋性紅色光合成細菌:以下、光合成細菌)を大量培養することで、さまざまな物質を生産させることを目指す。

光合成とは、一般的に光のエネルギーを活用して、二酸化炭素と水から植物の養分となる有機化合物を生産する反応として知られている。

Symbiobeでは、この反応を利用して、大気中や産業現場から排出される二酸化炭素を大量培養した光合成細菌に吸収させることそのものをビジネスにするほか、そこで生産された産業応用可能な物質(バイオポリマー)を生分解性プラスチックなどのプロダクトとして活用することも視野に入れ、研究開発を進めている。

温暖化を抑制しながら、持続可能なものづくりの実現を目指そうというわけだ(なお、この光合成細菌による光合成では酸素は発生しない)。

また、Symbiobeが注目している光合成細菌には、二酸化炭素だけではなく、大気中の「窒素」を原料に物質を生産する能力もある

実はこれも非常に大きなメリットだ。

2050年には、世界人口が100億人近くに上るとの試算がある。

「人口が増え続けると、それを支えるための食糧生産を増やさなければなりません。農業において、『窒素』は肥料になります。ただ、世界人口が急激に増え始めた1950年以降、農業に使用されている窒素肥料は自然に存在する肥料ではまかないきれなくなってきました」(後代表)

Find more statistics at Statista上記のグラフは、世界における成分別の肥料消費量推移だ。

天然の肥料が不足した状況を、人類は化学の力で解決してきた。「水と石炭と空気からパンを作る方法」とも言われる「ハーバー・ボッシュ法」だ。

ハーバーボッシュ法は、100年近く前から化学肥料の原料となるアンモニアを製造する方法として知られている。化学の教科書には必ず登場するほど、人類にとって重要な化学反応だ。

ただ、この反応の前提となるのは「高温・高圧」の環境。化学合成によって肥料を作るために、大量のエネルギーが必要になる。

つまり、これから先の食料需要をカバーするために、これまでの方法で肥料を作り続けていけば、地球温暖化を加速させてしまう悪循環に陥ってしまう可能性がある。

だからこそSymbiobeでは、常温・常圧・自然環境下でも窒素を物質として固定できる光合成細菌の可能性に注目している。空気や光、海水といった身近にあふれているものを材料に、肥料の原料を生産することができれば、世界の食料危機を持続可能な方法で解決する一助になるというわけだ。

また、Symbiobeでは、窒素を固定できる能力を生かして、タンパク質(窒素が含まれた複数のアミノ酸からできている)の生産も可能にする研究開発も進めている。

タンパク質を作ることができれば、魚の試料などとしての利用はもちろん、タンパク質繊維などの生産にも活用が可能だ。

実際、「人工クモ糸」の製造で知られるスパイバーとの共同研究では、遺伝子組み換え技術を活用することで「クモ糸シルクタンパク質」を合成する光合成細菌を作り出すことにも成功しているという。

Yahoo!ニュース

 

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