新潟県の脱炭素。エネルギー&車対策が鍵

新潟県内でカーボンニュートラルの拠点の一つとなる新潟東港=同県聖籠町

新潟県は2050(令和32)年に県内の温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すための中間目標をより高いものに改定し、それを実現するためのロードマップ(行程表)を策定した。地球温暖化の進行で近年、県内でも豪雨や高温など極端な気象現象が目立つようになり「脱炭素社会への転換は急務」(花角英世知事)となっている。県はどのようにして実現するのか。行程表のポイントをみてみた。
新たな中間目標

県は3月、「2050年カーボンゼロの実現に向けた戦略」を策定し、温室効果ガス排出量を「30(令和12)年度に13(平成25)年度比46%削減する」という新たな中間目標を設定するとともに、どのように実現するかを示す行程表を作成した。従来の26%削減をさらに強化したもので、知事は「野心的な目標」と話す。

中間目標については、国が昨年4月、国全体の削減目標を26%から46%へ強化している。

直近の19(令和元)年度のデータをみると、県内の排出量は2413万トン。中間目標を実現するには、排出量を約1500万トンにしなくてはならず、約900万トン削減する必要がある。同戦略では約900万トンをいかに削減していくかを「行程表」で示している。

電力・燃料が肝

県内の排出量2413万トンのうち、約8割は電力や化石燃料(石炭、石油、都市ガス)の使用に伴うもの=グラフ。そのため、まずはエネルギー関連の脱炭素化やCO2排出削減が必要になる。

新潟県内の温室効果ガス排出構造

県環境政策課は「洋上風力や太陽光発電など再生可能エネルギー(再エネ)の導入を促進するとともに、アンモニアや水素といった(燃焼時にCO2を出さない)燃料の受け入れ環境を県内の港に整備し、火力発電所での混焼などに利用していく」と説明する。

洋上風力については、村上、胎内両市沖でプロジェクトが進行中で、行程表では30(令和12)年度に400~700メガワットの導入を見込む。太陽光については、県の自然エネルギープロジェクトが実施される佐渡市などで導入を進めるなどして、同年度に1・5~26メガワットの導入を見込んでいる。さらに地熱やバイオマスなどにも力を入れる。

行程表ではこれらにより同年度までに電力で332万トン、燃料で19万トンのCO2削減を見込む。

車社会

車社会の新潟にとって、運輸部門でのCO2削減も大きな課題の一つだ。19(同元)年度の県内総排出量の18%を占め、産業部門(事業所)に次いで多い。

行程表ではガソリン車やハイブリッド車(HEV)などの燃費改善により、30(同12)年度までに70万トンを削減。さらに電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)などの次世代自動車を県内の全自動車の半分まで普及させ、58万トン削減する。合わせて128万トン削減する見込みだ。

森林で150万トン

産業部門では、事業所で30(同12)年度までに118万トンの排出削減を見込む。県環境政策課は「大規模事業所では、自家発電の脱炭素化や、排出したCO2を回収し資源として再利用するカーボンリサイクルを展開することを想定している。中小事業所に対しては、再エネ電力の自家消費や、省エネ設備の更新などを促進していく」と説明する。

また、大気中のCO2を吸収する森林などの整備も進め、150万トンの新たな吸収源確保を想定する。

これらを総合して同年度に約900万トンの排出削減を目指すことになる。その道のりは、技術革新が必要な部分もあって険しいが、「野心的な目標にチャレンジすることが重要」というのが気候変動対策に取り組む世界の産業界や自治体の〝常識〟となっている。

産経新聞

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