カーボンニュートラル、木質燃料 電力支える

うずたかく積まれた木質ペレット

 うずたかく積み上げられた長さ1センチほどの円筒形の粒は、ペットフードのように見えた。高さ20メートル近くある黄土色の山からは、木の匂いがほんのりと漂ってくる。物体の正体は、木くずを固めた木質ペレット。はるばる米国から船で運ばれてきた。燃焼に優れたマツなどの間伐材が主な原料という。
木質ペレット

 中部電力と東京電力ホールディングスが出資する発電会社のJERAは今月14日、試運転中の武豊火力発電所5号機(愛知県武豊町、出力107万キロ・ワット)を報道陣に公開した。8月5日から営業運転を始める。約240万世帯分の電力を賄うことができる。国内最大級の石炭火力発電だ。

 元々、発電所内では石油火力の1~4号機(計134・5万キロ・ワット)が稼働していた。2016年3月までに老朽化した4基が廃止され、JERAが18年春から5号機の建設を進めてきた。石炭コンベヤーを動かす電気室で煙が出るなどのアクシデントにも見舞われたが、今年1月から試運転を始めた。武豊火力発電所の石村雅士所長(57)は「一つ一つ、トラブルの芽をつぶしてきた」と語る。

木質ペレット

主に石炭を燃やして発電するが、脱炭素化を進める狙いから、燃料の約17%を木質ペレットで賄う。石炭だけで発電する場合と比べると、年間約90万トンの二酸化炭素(CO2)の排出削減につながるという。

武豊火力発電所内のタービン発電機

猛暑で冷房を使う機会が増えて、電力が足りなくなる可能性が指摘されている。老朽化した火力発電所の設備トラブルで、電力の供給が不安定になる事態が全国で相次いでいる。

 それだけに、新生・武豊火力は、頼りになる存在だ。電力需要に対する供給の余力を示す「予備率」は、中電管内では、7月は3・7%にとどまっているが、8月は、武豊火力が加わる効果もあって、5・7%に改善する。石村所長は「今年は夏場も冬場も電力需給は厳しい。できる限り、電力の安定供給に貢献したい」と話した。

読売新聞オンライン

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