「いま持ってるガソリン車に乗り続けるからいいや」が通用しない可能性

■EVの普及によってガソリン車が減るとガソリンやオイルが手に入らなくなる可能性がある
新車が消えゆくのは仕方ないが……すでに所有している「ガソリン車」にすら乗れなくなる可能性!

ガソリン車を所有できてもガソリンを買えなくなる!?

世界的なカーボンニュートラル宣言、CO2排出量の大幅削減を実現するためには、少なくとも乗用車はフル電動化が避けられない……というのが現状でのトレンドだ。

欧州を中心にハイブリッドを含むエンジン車の販売を禁止・休止するという動きも出てきている。もちろん販売中止になったからといって、民主主義においては個人所有が禁じられるわけではなく、しばらくエンジン車が残るともいえる。

そのため一部では、「最後のエンジン車を手に入れておきたい」というユーザーもいるようだ。しかし、どんなに大事にしていてもエンジン車に乗り続けることは難しくなる未来も予想できる。

まず考えられるのは、ガソリンや軽油といった燃料の入手方法に対する不安だ。エンジン車を所有することは個人の権利として認められているとして、CO2排出について企業への制限があれば、石油メジャーといっても一般向けのガソリン・軽油販売をいつまで続けることができるとは限らない。

そもそもクルマの電動化が進み、ほとんどガソリン・軽油が売れなくなれば、現状のガソリンスタンド・インフラを維持するのは不可能になる。レシプロエンジンの航空機や軍事向けにガソリン・軽油の供給は続く可能性は高いが、一般大衆が化石燃料を手に入れるのは非常に難しくなるだろう。

つまり、エンジン車を大事に所有していても、走らせることが事実上できなくなるのだ。

同時に、エンジンオイルも入手困難になると考えられる。エンジン車が減ってくれば、エンジンオイルがビジネスとして成立しなくなるのは自明であり、こちらも一般向けの販売は消えていくと考えるのが妥当だ。

そのほか、スパークプラグやエアクリーナー、オイルエレメントといった消耗品についてもエンジン車の台数が減ってくれば、生産が止まる可能性は高い。エンジンを維持するための部品はデッドストックに頼るという未来も見えてくる。

トランスミッションオイルについては、電動車両でも必要なので将来的にも入手可能かもしれない。それでもエンジン車を走らせるというのは、よほどのコネか、莫大な資産がなければ難しいという時代になるというのが、現時点で考えられるシナリオだ。

エンジン車が未来にも残るためには

もっとも、カーボンニュートラルの手段は電動化だけではない。エンジン車が生き残るシナリオも考えられる。

トヨタが中心となって開発を進めている水素エンジンが実用化されれば、エンジンオイルやスパークプラグといった消耗品は引き続き入手しやすい環境が維持される。ガソリンエンジンを水素エンジンにコンバートするのは難しいだろうが、そうした作業を請け負う業者も出てくるはずだ。

ほかには、カーボンニュートラル燃料の実現というシナリオもあり得るだろう。光合成によって大気中のCO2をO2に変えて、炭素を固定化する藻などの植物から生み出されるカーボンニュートラル燃料(人工ガソリン)が一般化するようなことがあれば、現状のエンジン車がそのまま走り続ける未来がやってくるかもしれない。

実際、日本が2050年にカーボンニュートラルを実現するとして、その段階でエンジン車をゼロにするためには、遅くとも2035年にはエンジン車の販売を中止している必要があるが、現状の電気自動車シェアを考えると、その実現は難しいだろう。

日本経済が上向かず、古いエンジン車が残らざるを得ないとすれば、むしろカーボンニュートラル燃料の開発に尽力して、実質的なCO2排出量ゼロを目指すほうが、トータルでのコストが抑えられるとも考えられる。

はたして、政府や国民がそうした政策を選ぶかどうかという疑問もあるが、エンジン車が2050年になっても公道を走っていられる可能性はゼロではなが・・・。

CARVIEW

コメントを残す