日産車でソーラーパネルEV、太陽光発電だけで年間7千km走行

後付け太陽光電池からバッテリーへ充電
 2022年6月29日(水)から7月1日(金)にかけてポートメッセなごや(名古屋市で開催された「人とくるまのテクノロジー展2022 NAGOYA」。主催者企画展示ブース内に展示されていたのが、日産「e-NV200」をベースにした太陽光パネル実証車両だ。

日産「e-NV200」をベースにした太陽光パネル実証車両

 この車両はNEDO・シャープ・日産自動車の共同で現在、先行開発と実験が行われているもの。人工衛星にも搭載される世界最高水準の変換効率(31.17%)を持つ太陽電池モジュールがボンネット、ルーフ、後部にわたって搭載されている。
ナンバー付きで公道走行が可能な車両であり、実際の研究についてもこの車両自体が用いられているとのことだ。
車両に関しては、ベース車両のEV「e-NV200」に対して駆動系や電池などには全く手を付けていないという。
後付けされた太陽光電池で産み出した電気を、バッテリーへそのままチャージする方式となっており、曇りや雨の日が続く場合には既存EV車両として運用できるように、普通/急速充電の能力もそのまま残された形となっている。
実際に実証実験を行っている、日産の研究所の担当者に話を聴いた。

EVの課題「航続距離」延長にも効果

「EV実証車両に搭載した世界最高水準の高効率太陽電池パネル」

「この車両を用いての1年間の実績で7100km、晴天時1日でおよそ20km程度の走行距離を、太陽光からの充電のみで補うことができている
「停車中はもちろんのこと、走行しながらも充電できるのがこの車両のメリット。現時点では、走行分のエネルギーを完全に補いながら発電できるまでには至っていないが、EVで課題となっている航続距離の問題に対して、電池の減りを緩やかにするなどの効果が考えられる」
また現時点での課題として、担当者はコストに言及した。
「この車両に装着される高効率の太陽光電池パネルは、まだ一般的に普及できるレベルではなく、効率向上とコストに関しては現状はっきりとしたトレードオフの関係となっているのが実情。そこを解決していくのが今後の技術課題と認識している」
「家庭の屋根など定置での普及が進んでいるシリコン系の太陽光パネルは、ローコスト化が進んでいる。しかし自動車への搭載を考える場合、車両の形状的に装着される範囲が限定されてしまう」
「限られたスペースの中でいかに電力をたくさん生み出すか、ということを考えると、高効率な太陽光電池パネルに頼らざるを得ないというのが現状だ」

車に太陽光パネル、思いがけず高効率

日産「e-NV200」をベースにした太陽光パネル拡大部分

「(実証車両には)走行しながらリアルタイムで発電状況を確認できるインターフェイスが搭載されている。太陽光パネルに関しては、晴天の状況でもあまり暑過ぎると充電効率は落ちる傾向があるが、クルマに装着されている場合だと、走行中は風による冷却効果があり、充電効率がよくなる傾向が見られた」
「また、太陽が当たっている場所であれば、渋滞中でも充電することが可能なので、混雑していることへのイライラが少ないというのも実験を通じての発見だった。駐車場も、あえて屋根のないショッピングセンターの屋上などを選んでみるなど、ドライバーの心理変化も楽しめるような使い方を、商品開発と併せて模索していけたらと考えている」
 まだ具体的な年次の話はできない、現時点では研究開発レベル、としつつも、技術革新が進めば大きな可能性を秘めている要素技術だ、と明るく話した研究所担当者の言葉が印象的だった。

Yahoo!ニュース

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