ナトリウムイオン電池でEVが100万円程度に、中国CATLが実用化したがトヨタら日本企業が有利か

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EVの普及に伴い電池需要が増し続ける中で、全固体電池や全樹脂電池などとともに、昨今注目を集めているのがナトリウムイオン電池です。
ナトリウムイオン電池とは、現在自動車やPCなど幅広く使われているリチウムイオン電池と同様、充放電可能な二次電池です。
トヨタなど日本企業が研究開発に努める中、中国では一部のEVにナトリウムイオン電池の採用が決まっており、実用化はすでに始まっています。
ではなぜこれだけの注目を集めているのでしょうか?

ナトリウムイオン電池イメージ

ナトリウムイオン電池とは何か、仕組みは?
ナトリウムイオン電池とは、リチウムイオン電池と同様、充放電可能な二次電池です。ナトリウムイオン電池は、正極にナトリウム酸化物、負極にハードカーボンと呼ばれる炭素材料、電解液に有機溶媒などが使われ、ナトリウムイオンが正極と負極の間を行き来することで充放電することができます(下図)

ナトリウムイオン電池が放充電できる仕組み

仕組みとしてはまず、正極のナトリウムイオンが電解液を通って負極に移動し、その正極と負極の電位差によって充電することができます。対して放電する際は、負極に蓄えられていたナトリウムイオンが、正極に移動することで放電することができます。

こうしたナトリウムイオン電池は近年、詳細は後述しますが、中国最大手の電池メーカーであるCATL(寧徳時代新能源科技)が実用化を開始したほか、以前からトヨタが研究開発を進めているなど、大きな期待と注目を集めています。

脱リチウムイオン電池が必要なワケ

ナトリウムイオン電池が注目される背景には、リチウムイオン電池依存からの脱却が挙げられます。EVなどの普及に伴い、リチウムイオン電池の需要は伸び続けています。

一方、リチウムイオン電池に使用する金属は希少な元素であり、また世界の一部の地域にしか存在しないことから、電池材料の供給不安という問題が生じています。リチウムイオン電池の電池性能は非常に優れているものの、将来的に資源不足になることが懸念されているのです。 対してナトリウムは、地球上に豊富に存在します。また、化学の元素周期表(図2)を見ると、ナトリウム(Na)はリチウム(Li)の真下にある同族の元素であり、化学的な性質が似ています。

こうした特徴から、リチウムイオン電池とともにナトリウムイオン電池の研究も、実は以前から行われていました。しかし、1990年代初頭、リチウムイオン電池の優れた電池性能の実現によって、研究開発の潮流はリチウムイオン電池へと移り変わりました。

そして、ナトリウムイオン電池で同等の性能を発揮するのは困難と考えられ、研究開発は下火になってしまったのです。しかし、近年のリチウムの資源不足への懸念から、再び脚光を浴びることになりました。

「メリット4つ」をリチウムイオン電池と比較

国内外で実用化が進むナトリウムイオン電池ですが、リチウムイオン電池と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。

(1)資源量が豊富
最大のメリットは、海水中などに存在するなど資源量が豊富にあり、世界中に存在することです。またコバルトなどの希少金属も使いません。

一方、リチウムは、地球の地殻中にわずか0.002%しか存在しないと言われる希少な資源であり、かつ南米など一部の地域に偏在している金属です。これからますます伸び続けていく電池の需要に対し、材料の供給不安を懸念する必要がなくなり、また海に囲まれる日本にとっては非常に有利なポイントとなります。

(2)使用温度範囲の広さ
一般的に電池には、適切な使用温度範囲があります。低温であるほど、電解液の粘度が増加して反応速度が下がり、抵抗値が上がるため、電池の出力が下がります。また高温になると、電池の性能劣化が加速し、寿命が縮まります。

リチウムイオン電池の場合は、電池材料にもよりますが、セ氏0度から45度程度が使用温度範囲と言われています。一方、CATLが開発したナトリウムイオン電池は、マイナス20度以下でも性能を保持でき、最高90度までなら充電可能と報告されています。ナトリウムイオン電池の使用温度範囲の広さが、メリットの1つと考えられるでしょう。

(3)急速充電のスピード
ナトリウムイオン電池の急速充電の速さは、一般的なリチウムイオン電池の5倍以上と言われています。CATLのナトリウムイオン電池の場合、約15分で80%程度の充電が可能です。リチウムイオン電池の急速充電スピードも日々進化を遂げているものの、ナトリウムイオン電池の急速充電の速さは、大きな特長の1つとされています。

(4)コスト
資源量が豊富に存在する分、材料費のコストを抑えられます。今後ナトリウムイオン電池のサプライチェーンが整備されていくことで、製造コストはより削減されていくでしょう。また、ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と電池構造に共通する部分が多いため、生産設備を流用しやすく、設備投資にかかるコストを抑えることができます。

「デメリット3つ」をリチウムイオン電池と比較

一方、デメリットになる部分は以下のとおりです。

(1)低いエネルギー密度
ナトリウムイオン電池の最大の課題は、エネルギー密度の低さです。車載用などの高性能なリチウムイオン電池は、1キログラム当たり200ワットアワーから270ワットアワーほどあるのに対し、CATLの開発したナトリウムイオン電池は160ワットアワーと報告されています。

ナトリウムがリチウムのような電池性能を発揮することは、元素の性質上、本質的に難しい面があります。しかし、電池のエネルギー密度は電極の容量密度に依存するので、高性能な電極が開発されることで、高容量なナトリウムイオン電池が誕生することも期待できるでしょう。

(2)重さ
ナトリウムの原子量はリチウムの3倍、イオン体積で2倍あり、重量が大きくなります。携帯機器やドローンなど軽量化が要求される用途には向きませんが、ESS(電力貯蔵システム)やEV、電動バイクなど重量の制約が少ない用途には支障がないと言えます。

(3)安全性
ナトリウムはリチウム同様、発火性や爆発性を持つため、安全面での懸念があります。通常、ナトリウムは、水に触れると激しく反応するため、灯油などの中に保存されています。製品化にあたっては、現行のリチウムイオン電池のように適切な安全対策が必要となるでしょう。

中国で実用化、日本も日本電気硝子が量産へ

・世界初、中国CATLのナトリウムイオン電池がEVに搭載

エネルギー密度は160Wh/kgと、リチウムイオン電池が200Wh/kg以上の性能を持つことと比較すると低い数値ではありますが、充放電速度の向上、-40℃までの低温駆動の実現、熱安定性の高さなどのメリットも持っています。

「ABバッテリーパック」という、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池のセルを組み合わせ、それぞれの強みを活かすソリューションも発表しており、電気自動車への活用も見込んでいる状態です。

これからの開発や本格量産に向けたサプライチェーンの構築に向けて、最大約1兆円の追加増資を行うとも公表しており、さらなる進展が期待されています。

トヨタら日本企業が有利

トヨタをはじめ、国内の大学や有名企業がバッテリーの研究開発を続けており、世界全体のバッテリー関連特許の4分の1を占めていて世界をリードしています、
安全性などに課題はあるものの、ナトリウムイオン電池の製品化に向け大きく前進しております。リチウムイオン電池と異なり、原料が希少物質ではなく安価であるため、製品化された場合の価格競争に大いに期待がかかっており、ナトリウムイオン電池を使ったEVがガソリン車より安価な100万円程度になる予想もされているようです。

FREE AID記事より抜粋

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