注目される海洋生物による二酸化炭素吸収『ブルーカーボンと呼ばれる』

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ブルーカーボンの主役、藻類

海洋の生態系によってCO2を吸収・蓄積する「ブルーカーボン」

ブルーカーボンとは、海洋および沿岸の生態系(特にマングローブ、塩性湿地、藻場)によって吸収および蓄積される炭素のこと。これらの生態系は、二酸化炭素を大量に吸収し、炭素を長期間蓄積する能力がある。炭素蓄積の主なプロセスは、生物が大気中の二酸化炭素を吸収し、光合成を通じてエネルギー源を生み出して成長するというものだ。その後、生物が死ぬと、吸収した炭素は土壌や堆積物中に蓄積されることになる。
ブルーカーボン生態系の拡大、保全や修復は、気候変動対策の1つとして注目を集めている。これらの生態系は炭素蓄積の効率が高く、陸上の森林と比較して炭素吸収量が多いことが特徴とされる。しかし、土地開発、温暖化、海面上昇などによって、これらの生態系が破壊されると、炭素の吸収・蓄積量が減少することになる。
ブルーカーボン生態系の拡大、保全と修復を促す政策や取り組みは、地球温暖化の緩和、生物多様性の維持、海洋・沿岸地域の生態系の保全に寄与する。

ブルーカーボン生態系の生育する場所は藻場

ブルーカーボンを作り出す海洋植物から構成されるブルーカーボン生態系には藻場、干潟、マングローブ林などがあります。
マングローブ林は熱帯や亜熱帯に分布しているので、日本の沿岸では藻場が主要な生育地になります。日本では、ブルーカーボンは藻場で生まれ、藻場の海底に貯留されます。

藻場の種類

藻場には大きく分けて海草(うみくさ)藻場と海藻(かいそう・うみも)藻場の2種類があります。
海草とは海の中で花を咲かせ、種子によって繁殖する海産種子植物で、アマモなどがその例です。
海藻とは胞子によって繁殖する海中の藻類で、アラメ・カジメ、ガラモ、コンブなどがその例です。

藻場の代表的植物アマモの生態

アマモは日本の沿岸域の浅海、砂地に分布する海草(かいそう、うみくさ)の一種です。
私たちが「かいそう」と聞いてまずはじめに思い浮かべるのはワカメやコンブですが、それらは海に生える藻の「海藻」です。
アマモは海に生息していますが、陸上の多くの植物と同じように花が咲き種を作って繁殖する種子植物です。
アマモは主に波の静かな湾の砂地にみられ、一般的に多年生植物(茎の一部や地下茎、根等が枯れずに残り、個体として複数年生存する植物)ものとされていますが、環境条件によって一年生(発芽後、一年以内に種子を残して枯れる植物)になるといわれています。
アマモは花を咲かせて種子を作る『生殖株』と、地下茎(露出せず地下で伸びる茎)を伸ばして生長する『栄養株』があります。一年生のアマモは種子で繁殖し、多年生のアマモは種子のほか、地下茎を伸ばすことで繁殖します。

藻場の2つの主要な役割:海洋生態系の維持とCO2の吸収源

藻場の果たす主要な役割のひとつは海洋生態系の維持です。藻場は海中のいろいろな生物にとって産卵の場や隠れ場所を提供しています。また、水の浄化や酸素の供給もしています。
窒素やリンなどの栄養塩を吸収して、海水の富栄養化を抑え、植物プランクトンが急激に繁殖する赤潮を防ぎます。さらに、自分自身がアワビなどの貝類その他の海洋生物の餌にもなっています。
藻場の果たす主要な役割のもうひとつは、ブルーカーボンを作り出し、その貯留の場ともなることによって、CO2の大事な吸収源になっていることです。

藻場の保全・再生の取り組み

藻場が消失して行くと、海洋生態系の維持やCO2の吸収ができなくなるので、藻場の保全・再生は今、是非とも取り組むべき急務となっています。
現在、世界的に、藻場が消失する「磯焼け」と呼ばれる現象が急速に進んでいます。沿岸域で年間、約2%〜7%の藻場の消失が起こっていると言われています。日本でも例えば瀬戸内海では、1960年〜1990年の30年間で1万6000ha、すなわち約7割のアマモ場が消失しています。
消失の原因の内最大のものは、沿岸域の埋め立て事業です。また、植物プランクトンの増殖による海水の透明度の低下も消失の原因として挙げられています。透明度が低下すると光合成反応が進まず海藻、海草の成長に支障を来たすからです。
他の原因として農薬や工場排水などの有害物質の流入や、アイゴやウニなど、海藻類を食べてしまう生物の繁殖も挙げられています。
いずれにしろ、早急に藻場の保全・再生取り組む必要を訴えられています。

日経BP論評より抜粋

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