米ライス大学、記録的な効率で太陽光から水素を作り出すデバイスを開発

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水素製造デバイス実験

米ライス大学の研究チームが、ペロブスカイト半導体による太陽電池と、水の電気分解を促進する触媒を一体化して、耐久性とコスト効率の高いスケールアップ可能な統合型デバイスを作成し、記録的な効率で太陽光から水素を造り出すことに成功した。ペロブスカイト層と水の間に導電性接着剤バリアを導入することにより、電気分解効率として20.8%を達成、効率が60%に低下するまでの耐久時間として102時間を実現した。太陽光発電を積極的に活用して、水や二酸化炭素、窒素などの安価な原料から、付加価値の高い製品や燃料を製造する化学工業の脱炭素に向けた基盤的技術の道を切り拓くことが期待されている。研究成果は、2023年6月26日に『Nature Communication』誌に公開されている。

クリーンエネルギーとして期待される水素の製造に関して、太陽光発電と水の電気分解による水素発生を単一デバイスに統合した光電気化学電池(PhotoElectroChemical cell:PEC)の開発が進められている。これまでに検討されてきた統合型PECは、主としてⅢ-Ⅴ族化合物系半導体を用いており、電気分解効率として19%程度の効率を達成しているものの、耐久性に関しては充分なものが得られてない。ある程度の耐久性を得ようとすると、効率が10%程度に低下するのが現状である。さらにⅢ-Ⅴ族半導体は、分子線エピタキシー法など高コストな手法により製造されるため、実用化に向けたスケールアップの大きな障害になっている。

一方で、2009年に日本の宮坂力博士によって開発されたハライドペロブスカイト半導体は、安価な溶液法で作製できる半導体でありながら非常に高い光電変換効率を持ち、次世代の太陽電池材料として高い注目を集め、世界中で研究開発が進められている。ペロブスカイト半導体を統合型PECに用いる研究も進んでいるが、ペロブスカイト半導体は水の電解液中において容易に溶解して損傷してしまう問題があり、統合型PECの実現には至っていない。

研究チームは、「さまざまな材料と技術を用いて試行錯誤を繰り返した」後、ペロブスカイト層と水の電解液の間のバリアに、2つの層を設けることによって解決策に辿り着いた。1つの層は水をブロックし、もう1つはペロブスカイト層と保護層の間に優れた電気的接触を維持するものであり、光電変換によって得られた電荷キャリアを触媒に輸送するとともに、ペロブスカイト半導体と電荷輸送層を腐食性電解液から保護する導電性接着剤バリアを導入した。

その結果、ペロブスカイト半導体の高い光電変換効率の特徴を活かした高い電気分解効率20.8%を得るとともに、効率が60%に低下するまでの連続耐久時間として102時間を実現した。「太陽集光器なしの光電気化学電池として、これまでに報告されたことのない最高の効率」と、研究チームは説明する。そして、このようなデバイスにおけるバリア設計は、さまざまな反応、半導体について有効であり、多くのシステムに適用可能だとし、太陽光だけをエネルギー源として、豊富で安価な原料を用いて付加価値の高い製品や燃料を製造する、広汎な化学工業の脱炭素に向けた基盤的技術になる、と期待しているとのこと。

fabcross for エンジニア記事より抜粋

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