人工光合成で直接水素を製造する技術が未来を開く

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ソーラー水素製造・分離・回収実験装置

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、さまざまな技術開発が加速度的に進められています。NEDOは、CO2排出量の削減に貢献できる革新的な技術の一つとして、太陽光エネルギーと光触媒によって水を分解し、そこから得られる水素とCO2を原料とした化学原料を製造する「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発(人工光合成プロジェクト)」に取り組んでいます。

人工光合成プロジェクトの概要

2019年8月からは、世界最大となる100㎡規模の光触媒パネル反応システムを開発し、東京大学柿岡教育研究施設(茨城県石岡市)内に設置して実証試験をスタート。その結果、水素と酸素の混合気体から、高純度のソーラー水素を安全かつ安定的に分離・回収することに世界で初めて成功しました。

さらにガス流路を適切に設計することで、日照条件に左右されず安定したガス分離性能を維持し、屋外でも長期間安全に運転できることを確認しました。なお光触媒反応システムを適切に設計することで、自然着火や爆発、装置の破損、光触媒や分離膜の性能劣化等は確認されませんでした。今回の研究成果は、光触媒パネル反応システムの大規模化や、ソーラー水素製造プロセスの安全設計に関する基本原理を示した画期的な成果として、英国の科学雑誌「Nature」に掲載されました。

現在のシステムは紫外光しか吸収できないため、太陽光エネルギー変換効率は1%未満ですが、今後は紫外光と可視光を吸収できる高効率な光触媒の開発に取り組み、太陽光エネルギー変換効率5~10%の達成と実用化を目指します。NEDOは人工光合成技術の社会実装に向け、光触媒パネルの低コスト化とさらなる大規模化・高効率化のための技術開発を進めていきます。

3m2光触媒パネル反応器の外観(左)と、光触媒パネル反応器から生成した水素と酸素の混合気体(右

<人工光合成とは、将来への展望>
植物は太陽光を利用して水を分解し、デンプン等の有機物を作り出します。この植物の光合成の仕組みを応用したのが、人工光合成技術です。人工光合成では、太陽光エネルギーと光触媒を使って水を直接、水素と酸素に分解します。水素はCO2と合成するメタネーション手法でメタンガスにすれば、現状の発電施設や一般家庭用のガスとしてそのまま使えるエネルギーとなるばかりか、CO2との反応でプラスチック等の原料となる基幹化学品(C2~C2オレフィン)を作り出すこともできます。この技術が実用化できればカーボンニュートラルのゲームチェンジャーとなるばかりか、エネルギー問題の大転換となる、とても期待の技術なのです。

NEDO Webより抜粋

 

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